いわき民報・愉しむ日常。

2006年5月29日

 気負いはない。
いい塩梅がちょうどいい。

鈴木忠寿・智美

ふたを開ける。まろやかな湯気がふんわりと上がって、ふくらとしたお米が姿を見せる。しゃもじを入れると、絶妙のおこげも。ご飯を頂く幸せに、ゆったり包まれる。
鈴木忠寿、智美さん夫婦=鹿島町=が土鍋で炊飯するようになったのは、4年前。それまでは電気炊飯器を使っていたが、よく壊れ、修理するにも買った方が安い現状があった。そんな時ふと、土鍋でご飯を炊いてみようと思った。「結構炊けるんだなと、感動があった」。ご飯は炊飯器で炊くという「固定概念」があったが、やってみたら料理の延長のような、自然な感覚だった。
2人は今から10年ほど前にギャラリーを開いた。忠寿さんは会社員の傍ら智美さんと共にギャラリーに携わり、創作活動にも励んだ。だが、「二束のわらじは作家さんに失礼か」(忠寿さん)と6年前、会社を辞し夫婦でギャラリーに専念した。土鍋ご飯は、そんな時期とも重なった。知り合いの作家が作った土鍋を求め、習慣になった。
鍋を掛けてから蒸らしまでの間は、火や加減を気にしなければならない。だが、お米とコミュニケーションを取っているような楽しさがあるという。土鍋炊飯をきっかけに、みそを手作りしたり、鰹(かつお)節を自分で削ったりと、素材や手作りの味わいも感じられるようになった。土鍋ご飯が「感じる心」をはぐくんでくれた。忠寿さんも海藻採りを楽しみ、食卓に彩りを添える。目の届く場所に自作を置き、日により搗(つ)きを変えて炊いたご飯を味わう。忠寿さんの満たされるときだ。
「変えようと思ったのではなく、自然な流れの中にあった」と夫婦。ギャラリーでのさまざまな出会いが「生活を楽しむ」ことを教えてくれた、と。「きっちりやろうと思うのではなく、いい塩梅(あんばい)がいいのかな」。夫婦に気負いなく日々を愉(たの)しむ。


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